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今回の記事では「PER100倍超えでも何故株価は上昇するのか?」について解説します。
株式投資を初めて最初に聞く株価指標に「PER(株価収益率)」があると思います。
PER(株価収益率)の目安として、このような見方をすれば良いと本で読んだ方は多いのではないでしょうか?
PER水準 | 株価判断 |
---|---|
PER10倍前後 | 株価は割安 |
PER20倍超え | 株価は割高 |
PERについて一般的な見方は「PER20倍を超えると株価は割高。だから買わない方が良い。」です。
ちなみに日経平均株価のPERは11~15倍程度で推移しています。
ですが株価が上昇するにつれてPERが50倍、80倍、100倍と上がってもなお株価上昇が続く個別銘柄を度々目にします。
今回は「PERが100倍超えの銘柄でも株価が上昇する理由」を解説します。
PER100倍超え銘柄は成長期待の高い企業?
PER100倍を超える銘柄は個人投資家に人気の新興市場の成長期待の高い銘柄です。(マザーズ市場、ジャスダック市場)
新興市場銘柄の株価は5倍、10倍と株価が上昇し、時には株価が値上がり前の100倍にまで上昇するケースがあります。
株価100倍だと「100万円→1億円」に増える計算です。
1銘柄に投資したことがきっかけで億万長者になれるかもしれない、株式投資で大儲けするために個人投資家が新興市場銘柄へ投資する理由です。
PERが100倍を超えても株価上昇が続く銘柄は「新興市場銘柄+超成長期待企業」の2つの条件が当てはまります。
つまりこの条件の銘柄を日経平均株価の「平均PER 12~15倍」と比較して割安・割高と判断するのは間違いです。
日経平均銘柄と新興市場銘柄は各銘柄の特長が全く違うので比べてはいけません。
PER100倍を越えても株価が買われる理由は?
ここからはPER100倍超えでも株価が買われて上昇する理由を解説します。
PER100倍超え企業の例を使って計算します!
PER100倍でも10年後は割安?
「PER」は企業の現在の利益に対しての株価の評価です。
つまり企業の業績が今後、成長するのか衰退するかは考慮せずにPERは計算されています。
【PERの計算式】
PER=株価÷1株利益
PER=時価総額÷当期純利益
計算式からPERは「現在の株価、もしくは時価総額」と「現在の利益」を比較していることが分かります。
では今後、企業の業績が大きく成長する企業だとすればどうでしょうか?
もし5年後の利益が現在の5倍、10年後の利益が現在の20倍になっていると考えれば現在のPERが割高でも業績の成長と共にPERは割安になります。
「PER100倍=割高」の罠を解説
こちらでは具体的な例を使って説明します。
【例】
A社 株価1000円、1株当たり10円
→PER100倍
こちらの条件から計算されたA社のPER100倍という水準は、現在の業績(=1株当たり利益)から計算されたPERの値です。
A社の事業は非常に好調で「年+100%の増収増益が5年間は継続する」と市場が予想してたらどうでしょう?
各期25%増益を4四半期続ければ、1年間で年率100%の増益です。(1年後に業績2倍)
今後、大きな成長が期待される規模がまだ小さい新興企業なら十分可能な水準です。
時間軸 | 1株利益 |
---|---|
現在 | 10円 |
1年後 | 20円 |
2年後 | 40円 |
3年後 | 80円 |
4年後 | 160円 |
5年後 | 320円 |
すると年率100%で業績が拡大し続けると5年後の1株当たり利益は「320円」にまで成長しています。
この「1株当たり利益の成長」に対して現在の株価とPERを当てはめて計算した表がこちらです。
株価 | 1株利益 | PER | |
---|---|---|---|
現在 | 1000円 | 10円 | PER100倍 |
1年後 | 1000円 | 20円 | PER50倍 |
2年後 | 1000円 | 40円 | PER25倍 |
3年後 | 1000円 | 80円 | PER12.5倍 |
4年後 | 1000円 | 160円 | PER6.25倍 |
5年後 | 1000円 | 320円 | PER3.12倍 |
A社は現在はPER100倍ですが「3年後PER12.5倍」「5年後PER3.12倍」と驚くほど、PERの水準が低下しています。
つまりA社が今後、大きく成長すると市場参加者の多くが考えており業績成長を先読みして株価が買われているケースです。
現在のPERは100倍でも3年後、5年後のPERを予測計算すると現在のPERは実質的に割安だったということが結構あります。
PERは現在の「株価」と「1株利益」から計算されており、将来的な株価の成長を見越した値を表ていない点に注意が必要です。
PER100倍超えの銘柄は需給良好?
PER100倍超えの銘柄はチャート上で高値を更新し続けているケースが多いです。
これは過去、株を購入した投資家は全員が含み益を抱えている状態です。
手持株が含み益だと同じ銘柄への買い増しが入りやすく、株価が上昇し続けている銘柄は「買えば利益が出る」と新規の買い手もどんどん参入します。
「買いが買いを呼ぶ」状況になり、需給良好で株価は上昇しやすくなります。
この状況になると企業のファンダメンタルは無視、値動きから利益を得ることのみを目的に多くの投資家の売買が集中します。
すると株価は短期間でどんどん上昇し、PER100倍の水準を超えてもなお株価の上昇は止まらないといった状況になります。
このようなケースは「話題・流行りのテーマ株」などに多く見られる現象です。
先行投資で利益縮小?PER100倍超えの謎!
現時点で企業がかなり儲かっている状態でも、事業への先行投資を積極的に行っており利益が縮小しているケースです。
例えば実際は「1株利益=10円」でも、仮に事業投資金額を抜きで計算すると「1株利益=80円」になったとします。
すると「1株利益10円、PER100倍」の銘柄でも、1株利益が80円になればPERは12.5倍まで一気に下がります。
つまり事業への先行投資を終えて稼いだ利益を手元に残し始めるとPERの値も一気に低下するということです。
こちらは決算書を詳しく読めば直ぐに分かることなので、表面のPERの水準だけで判断しないように注意しましょう。
まとめ
今回の記事では「PER100倍超えで株価上昇の理由は?PERの秘密とは?」について解説しました。
PER100倍を超えても株価が上昇し続ける理由が分かりましたか?
株価上昇には企業の業績の成長・好調が付き物です。
当初は業績拡大が順調でも決算発表の際に業績拡大ペース鈍化、もしくは減収減益などが発覚した時は株価が急落するケースを想定しておかなければなりません。
PER100倍を超えるような新興企業銘柄は大きなリスクが潜んでいることも頭に入れて投資を行うようにしましょう。