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こちらの記事では「有利子負債月商倍率」について解説します。
投資を検討中の企業があれば「有利子負債月商倍率」で分析することをおススメします。
有利子負債月商倍率を使えば企業の安全性の正しい判断が出来ます。
「有利子負債月商倍率」とは⁉
「企業の抱える有利子負債(借金)が月間売上の何か月分か?」を表す指標です。
企業の「月間売上」と「借金額」を比較して、借金の返済負担を判断します。
有利子負債月商倍率が高い値の企業ほど、借金返済が滞るリスクが高い企業です。
次に有利子負債月商倍率の計算式を解説します。
「有利子負債月商倍率」の計算式は?
有利子負債月商倍率の計算式はこちらです。
【有利子負債月商倍率の計算式】
有利子負債月商倍率=
(短期借入金+長期借入金+社債)÷(売上高÷12か月)
計算式を解説すると、
「短期借入金+長期借入金+社債」 ➡ 借金合計
「売上高÷12か月分」 ➡ 1か月分の売上高
つまり「借金の合計金額」と「1か月の売上額」を比較した計算式であることが分かります。
計算された値の単位は「カ月分」です。
仮に「2か月分」であれば、企業の2か月分の売上の借金を借りていることになります。
「有利子負債月商倍率」の使い方は?
有利子負債月商倍率は値が「高いのか?」「低いのか?」で判断します。
有利子負債月商倍率が高ければ借金返済リスクが高く、反対に有利子負債月商倍率が低ければ借金返済リスクが低いということになります。
【有利子負債月商倍率と借金返済リスクの関係】
有利子負債月商倍率 | ➡ | 返済リスク |
高い | ➡ | 危険 |
低い | ➡ | 安全 |
有利子負債月商倍率は平均値より、高くても低くても注意が必要です。
「高い」企業は売上規模に対して借金額が大きいため、借金を返済しきれないリスクが高いです。
反対に有利子負債月商倍率が「低い」ケースは自己資金のみで企業運営を行っているため、借金返済が滞るリスクはゼロです。
借金を上手く使った経営をしないと企業は順調に成長しません。
有利子負債月商倍率が平均よりも低い企業は、事業拡大に消極的で成長意欲の無い企業の可能性が高いです。
次に有利子負債月商倍率の平均・基準を紹介します。
「有利子負債月商倍率」の平均・目安は?
有利子負債月商倍率は「3か月間」前後が平均です。
企業全体の平均は3か月ですが、業種毎に適正な値は違います。
そのため企業の属する業種の有利子負債月商倍率の平均値と比較すると、より正確な判断が下せます。
【有利子負債月商倍率 業種平均】
業種 | 安全 | 平均 | 危険 |
製造業 | 4か月 | 5.5か月 | 7か月 |
建設業 | 2.1か月 | 3.45か月 | 4.8か月 |
小売業 | 2.2か月 | 3か月 | 5か月 |
卸売業 | 1か月 | 1.75か月 | 3か月 |
「有利子負債月商倍率 〇か月分=安全(もしくは「危険」)」と単純な判断をするのではなく、「企業」「業種の平均(業種の特性)」「企業規模」を比較するようにしましょう。
「有利子負債月商倍率」を企業例で分析!
先ほどの一覧より小売業の有利子負債月商倍率の平均「3か月」です。
製造業は「平均5.5か月」と小売業より高く、卸売業は「平均1.75か月」と低いです。
その理由を順番に解説します。
製造業 平均5.5か月
製造業の有利子負債月商倍率の平均は「5.5か月」と高い業種です。
その理由は企業運営に必要な設備費用が高いことが理由です。
機械設備、工場は高いと何十億、何百億とかなり高額です。
すると必然的に借入金の額が大きくなり、有利子負債月商倍率の平均も高くなります。
小売業 平均3か月
小売業の有利子負債月商倍率の平均「3か月」です。
「店舗」「売り場」「商品仕入」は事業に必要な一般的な設備です。
そのため有利子負債月商倍率の業種平均は、企業全体の平均値「3か月」とピッタリ一致します。
卸売業 平均1.75か月
卸売業の有利子負債月商倍率の平均は「1.75か月」と低い業種です。
事業内容が仕入れた商品を次の納品先に送る流れを担う業種なので、企業運営に必要な設備は多くありません。
そのため少額の設備投資で事業が行えるので有利子負債月商倍率の平均は低くなります。
「有利子負債月商倍率」の注意点
有利子負債月商倍率の値は、様々な状況に影響されます。
同じ業種内の企業でも有利子負債月商倍率の値が平均値を外れるケースがあります。
有利子負債月商倍率に影響する企業の特長・要因を知ることが重要なので、いくつかのケースを紹介します。
【例1】成長に向けた借金
企業の売上規模以上に大きな借金を抱えるケースです。
設立間もない企業や事業拡大に積極的な企業は、銀行融資を依頼し多額の設備投資を行います。
そのため有利子負債月商倍率は高めであるケースが多いです。
企業設立後は成長スピードが重要なので、借金返済リスクは高いですが成長期待は大きな企業です。
ですがあまりに有利子負債月商倍率が高い企業は借金返済が滞り、最悪は倒産するケースも頭に入れておきましょう。
【例2】業績悪化
企業業績が悪化し、売上高が減少しているケースです。
事業が上手くいかず全盛期より売上高が大幅に縮小、業績挽回を試みて銀行融資を受けるも売上が改善しない企業です。
このような企業は「借金増加」と「売上減少」のダブルパンチで、かなり危ない状態の企業なので有利子負債月商倍率はかなり高いケースが多いです。
まとめ
今回の記事は「【安全性分析】有利子負債月商倍率の平均は?業種毎の目安・基準は?」でした。
有利子負債月商倍率は「高い=危険な企業」「低い=良い企業」と単純に判断をしてはいけません。
高くても「倒産危機が迫る本当に危険な企業」もあれば、「今後の急成長に向けた積極的な設備投資を行う企業」もあります。
表面上の数値から単純な評価をするので無く高い理由、低い理由まで調べて企業の状態、取り組みを評価することが大事です。